埼玉県の通信制高校生のためのキャリア教育シリーズ Vol.14 – NPO法人あいだから学ぶ「心は人と人のあいだにある」社会支援の世界

こんにちは!埼玉県の通信制高校で頑張っているみなさん。今回は、埼玉県熊谷市を拠点とする「NPO法人あいだ」を参考に、社会問題解決や若者支援の分野でのキャリアの可能性について一緒に考えてみましょう。

目次

NPO法人あいだってどんな団体?

NPO法人あいだは、「心は人と人のあいだにある」をモットーに、若者の自立や社会の貧困問題に焦点を当てて活動している団体です。ある精神科医から聞いたこの言葉に感銘を受け、人と人とのつながりを大切にした支援を行っています。

団体の基本情報

  • 設立:平成30年(2018年)に埼玉県に認証を受け設立
  • 拠点:埼玉県熊谷市
  • 理念:”愛も貧困も人と人との間に起きる。だからこそ人間は、愛や貧困をいつでも生み出すことができるし、消し去ることもできる”
  • 活動範囲:埼玉県北部を中心に、全国にも活動を拡大中

3つの主要事業

  1. 自立援助ホーム「すだちの木」:15歳から20歳までの児童や青少年を対象とした施設
  2. 学習支援事業「てらこ」:中高生向けの無料学習支援
  3. 移動式子ども食堂「あい♡だいな〜」:キッチンカーによる子ども食堂

なぜ今、社会支援・福祉分野に注目するべき?

現代社会では、様々な問題が複雑に絡み合っています。NPO法人あいだが取り組んでいるような社会支援の分野は、これからの社会でますます重要になっていきます。

社会課題の現実

  • 若者の貧困問題:親と暮らせない若者たちの自立支援が必要
  • 教育格差:学習機会に恵まれない子どもたちへの支援
  • 地域のつながりの希薄化:人と人とのつながりを復活させる取り組み
  • 子どもの貧困:6人に1人の子どもが貧困状態にある日本

通信制高校生の経験が活かせる理由

通信制高校で学んでいるみなさんには、社会支援分野で活躍できる大きな強みがあります:

  • 困難を乗り越えた経験:様々な理由で通信制を選んだ経験は、同じような境遇の人への理解につながります
  • 多様性への理解:様々な背景を持つ人たちと接してきた経験
  • 自立した学習能力:自分で学び続ける力は支援の現場で重要
  • 柔軟な思考力:固定観念にとらわれない視点

社会支援分野で活躍できる職業

NPO法人あいだの活動を参考に、社会支援分野で活躍できる様々な職業を紹介します。

1. 自立援助ホーム職員

どんな仕事? 15歳から20歳までの若者に、就労支援、学習習慣の定着、その他の日常生活上の援助及び生活指導を行う仕事です。

具体的な業務内容

  • 入所者の日常生活サポート
  • 就労・進学に関する相談支援
  • 生活スキルの指導
  • 関係機関との連携・調整

おすすめポイント

  • 「失敗できるチャンス」を提供するという独自の支援理念
  • 若者の成長を間近で見守れるやりがい
  • 一人ひとりに深く関わる仕事

必要な資格・経験

  • 社会福祉士(推奨)
  • 臨床心理士・公認心理師(あるとよい)
  • 福祉や心理学の知識

2. 学習支援員・教育支援コーディネーター

どんな仕事? 勉強を教えてほしい中高生と、教えたい大人をマッチングし、学習支援を行う仕事です。

具体的な業務内容

  • 学習困難な子どもへの個別指導
  • ボランティア講師の募集・研修
  • 学習プログラムの企画・運営
  • 子どもや保護者との面談・相談

おすすめポイント

  • 教育格差の解消に直接貢献できる
  • 子どもたちの成長を支援できる
  • ボランティアや地域の人々との協働

必要な資格・経験

  • 教員免許(あるとよい)
  • 学習支援に関する経験
  • コミュニケーション能力

3. NPO・社会起業家

どんな仕事? 従来の福祉支援の枠を超えた新しい若者支援活動を実践するような、社会課題解決のための事業を立ち上げ・運営する仕事です。

具体的な業務内容

  • 社会課題の調査・分析
  • 解決策の企画・立案
  • 資金調達(助成金申請、クラウドファンディングなど)
  • チームマネジメント
  • 事業運営・拡大

おすすめポイント

  • 自分のアイデアで社会を変えられる
  • 新しい支援の仕組みを作れる
  • 全国に活動を広げる可能性

必要なスキル

  • 企画力・実行力
  • コミュニケーション能力
  • マネジメント能力
  • 資金調達のスキル

4. 子ども食堂運営・コーディネーター

どんな仕事? 移動式子ども食堂のように、より多くの子どもたちへ食事を届ける仕組みを運営する仕事です。

具体的な業務内容

  • 子ども食堂の企画・運営
  • ボランティアスタッフの募集・調整
  • 食材調達・寄付受け入れ
  • 地域との連携・ネットワーク構築
  • イベント企画

おすすめポイント

  • 子どもたちの笑顔を直接見られる
  • 地域の人々と協力して活動できる
  • 創意工夫で新しい取り組みができる

必要なスキル

  • 調理や栄養に関する知識
  • イベント企画・運営能力
  • 地域ネットワーク構築能力

5. 社会福祉士・精神保健福祉士

どんな仕事? 様々な理由で困っている人の相談に乗り、適切な支援につなげる専門職です。

活躍できる場所

  • 児童相談所
  • 福祉事務所
  • 医療機関
  • NPO・社会福祉法人
  • 学校(スクールソーシャルワーカー)

おすすめポイント

  • 国家資格として社会的信頼が高い
  • 様々な分野で活躍できる
  • 専門知識を活かして長期的にキャリアを築ける

資格取得の道筋

  • 福祉系大学・専門学校での学習
  • 実習・実務経験
  • 国家試験合格

6. 臨床心理士・公認心理師

どんな仕事? 臨床心理士でもある職員の視点から、従来の福祉支援の枠を超えた新しい若者支援活動を実践するような、心理的支援の専門職です。

活躍できる場所

  • 心理相談室・クリニック
  • 児童相談所・福祉施設
  • 学校(スクールカウンセラー)
  • 企業(産業カウンセラー)
  • NPO・支援施設

必要な準備

  • 心理学系大学院での学習
  • 実習・実務経験
  • 資格試験合格

NPO法人あいだから学ぶ支援の考え方

NPO法人あいだの活動から、社会支援において大切な考え方を学ぶことができます。

1. 「失敗できるチャンス」を提供する

すだちの木が提供しているチャンスの主たるものは「失敗できるチャンス」です。ここを出た後に失敗するのであれば、大人がフォローできる間に失敗をたくさんすればいいという考え方は、通信制高校生のみなさんにも通じるものがあります。

通信制高校生への応用

  • 失敗を恐れずに挑戦することの大切さ
  • サポートがある環境での経験の価値
  • 失敗から学ぶ成長のプロセス

2. 貧困問題への新しいアプローチ

困っている人を減らすより、困っていない人を「助ける側の人」にする方が効率的な貧困対策になります。NPO法人あいだは貧困の一次予防をしています

支援者としての視点

  • 予防的なアプローチの重要性
  • 地域全体を巻き込む支援の仕組み
  • 「助ける側」に回ることの意義

3. 人とのつながりを重視する

人との関わりの欠如が貧困問題の本質だと考えます。まずは、人と会うことに身構えるという状況をなくし、人と会うことのハードルを下げることが貧困対策につながります

実践のポイント

  • 気軽に集まれる場所づくり
  • 敷居の低い支援の提供
  • 人と人とのつながりを促進する仕組み

社会支援分野でのキャリア形成のステップ

通信制高校から社会支援分野でキャリアを築くための具体的なステップを紹介します。

ステップ1:まずは現場を知る

  1. ボランティア活動への参加
    • 地域のNPOでのボランティア
    • 子ども食堂の手伝い
    • 学習支援活動への参加
  2. 施設見学・体験
    • 福祉施設の見学
    • NPOのイベント参加
    • 支援現場の実際を体験

ステップ2:基礎知識とスキルを身につける

  1. 進学先の選択
    • 社会福祉学部・心理学部
    • 教育学部・人間科学部
    • 通信制大学という選択肢も
  2. 資格取得を目指す
    • 社会福祉士
    • 精神保健福祉士
    • 公認心理師・臨床心理士

ステップ3:実務経験を積む

  1. アルバイト・インターンシップ
    • NPOでの有償ボランティア
    • 福祉施設でのアルバイト
    • 行政機関でのインターンシップ
  2. ネットワーク構築
    • 同じ志を持つ仲間との出会い
    • 先輩支援者との関係構築
    • 地域の関係者とのつながり

ステップ4:専門性を高める

  1. 継続的な学習
    • 研修会・セミナーへの参加
    • 専門書籍での学習
    • 事例検討・スーパービジョン
  2. 新しい支援手法の開発
    • 既存の枠を超えた支援の企画
    • 地域の特性を活かした取り組み
    • 技術やアイデアを活用した革新

通信制高校生だからこそできること

NPO法人あいだの理念を参考に、通信制高校生だからこそできる社会貢献を考えてみましょう。

1. 同世代への理解とサポート

  • 同じような経験を持つ若者への共感
  • ピアサポート(仲間同士の支援)の提供
  • 体験談の共有による勇気づけ

2. 多様性を活かした支援

  • 様々な背景への理解
  • 画一的でない個別的な関わり
  • 一人ひとりの個性を大切にする視点

3. 柔軟な発想と行動力

  • 既存の枠にとらわれない発想
  • 新しい支援方法の開発
  • SNSやテクノロジーを活用した支援

4. 当事者視点の重要性

  • 支援を受ける側の気持ちが分かる
  • 本当に必要な支援の提案ができる
  • 上から目線でない対等な関係づくり

まとめ:「あいだ」で生まれる新しい可能性

NPO法人あいだの”愛も貧困も人と人との間に起きる。だからこそ人間は、愛や貧困をいつでも生み出すことができるし、消し去ることもできる”という考え方は、通信制高校で学んでいるみなさんの可能性を示しています。

みなさんの経験が社会の宝物になる理由

  • 困難を乗り越えた強さ:同じような状況の人に希望を与えられる
  • 多様な視点:一つの価値観にとらわれない柔軟な思考
  • 自立した学習能力:継続的に成長し続ける力
  • 人への共感力:困っている人の気持ちに寄り添える

社会支援分野で得られるもの

  • 直接的な社会貢献:目に見える形で人の役に立てる
  • 人とのつながり:支援者・被支援者・地域の人々との絆
  • 成長の実感:支援する人も支援される人も共に成長
  • 社会を変える力:新しい仕組みや価値観を創造する可能性

未来を担う子ども達、それもその総仕上げとも言える時期を送っている彼ら彼女達を一緒に応援してくださいという言葉のように、みなさんも「助ける側」の仲間になることができます。

心は人と人との「あいだ」にある。みなさんの体験や思いが、きっと誰かの心に届き、新しい可能性を生み出すはずです。

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